【教育】足尾鉱毒事件と利根川水系渡良瀬川の治水・利水について解説/環境文化創造センター - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

【教育】足尾鉱毒事件と利根川水系渡良瀬川の治水・利水について解説/環境文化創造センター - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

環境文化創造センター

【教育】足尾鉱毒事件と利根川水系渡良瀬川の治水・利水について解説

2020年12月14日

2018年度に発足した環境文化創造センターの役割の一つとして,全学の環境に関わる教育のサポートやフィールドの紹介があります.12月2日に最高学部2年生は前期課程修了研究旅行として栃木県の足尾・日光方面へ出掛けましたが,その際「足尾鉱毒事件と利根川水系渡良瀬(わたらせ)川の治水・利水」をテーマに,環境文化創造センター・最高学部の吉川慎平(専門:河川工学・環境工学・他)が,以前からのフィールドワークの蓄積を基に,南沢での事前学習と現地解説の講師を務めました.研究旅行並びに当日の様子についてはこちらをご覧ください.

 

渡良瀬川の草木ダム

 

*足尾鉱毒事件:明治初期から始まった国内一の生産量を誇る足尾銅山の操業に起因する公害.有害物質を含む鉱毒水が渡良瀬に排水されたことで水質汚染を引き起こした.更に鉱毒ガスが上流一帯の山林を枯らし洪水を誘発したことで,農地を含む下流一帯へと広く汚染が拡大した.明治中期から田中正造を中心に下流の住民による反対運動が行われて来たが,閉山直後の1974年に原因企業の責任が認定されるまで約100年を要した.

 

足尾銅山(跡)は日本の公害問題の原点として名高く,観光地である日光から近いことから,関東圏の小学校の修学旅行(社会科見学)先としても定着しています.一方で鉱毒被害は渡良瀬川を媒介としたものであるにも関わらず,日光側から足尾を往復するルートではその川面をほとんど捉えることができません.そこで今回は中流の群馬県みどり市(大間々町)側より国道122号線で渡良瀬川沿いに上流へと遡るルートを提案しました.本来であれば鉱毒被害を受け湧水地建設のために移転を余儀なくされた,下流の旧谷中村跡(渡良瀬遊水地)等を含めて巡検することが望まれますが,日帰りであることから割愛し,事前学習での紹介に留めました.

当日は晴天にも恵まれたため,車中から関東平野の広がりと榛名山,赤城山,谷川岳の眺望,渡良瀬川が作り出した大間々扇状地等の地形について確認し,渓谷沿いでは実際の川面を見ながら現在の渡良瀬川の水利用(用水・発電)や,わたらせ渓谷鉄道(旧国鉄足尾線)の歴史について解説しました.最初の立ち寄り地とした(独)水資源機構の草木ダム展望台では,多目的ダムの基本的な機能と,煙害による上流部の荒廃と治水対策の必要性を中心に,草木ダムの特徴について解説しました.

 

草木ダム展望台で記念撮影

 

続いて足尾へと進み,車中から各地区に残存する鉱滓ダム(堆積場)や選鉱場,精錬所跡の他,土木遺産的構造物,現在も稼働するや変電所や排水処理施設の外観を確認しました.「足尾銅山観光」では自由見学とし,最後に一般車両が進入できる最上流地点の「銅(あかがね)親水公園」に立ち寄り,煙害による荒廃地からの土砂流出を防止する巨大な足尾砂防堰堤とその周辺に広がるの山林の様相を確認し,国や県による砂防・緑化事業についても解説しました.その際,国土交通省が発行する簡易版パンフレットである「SABO(砂防)カード」を全員に配布し理解を深めてもらいました.

 

足尾銅山・本山製錬所跡(2019年6月撮影)

 

この他に,事前学習では銅製品の重要性と精錬プロセスと公害発生のメカニズムについても解説した他,2014年に放映されたNHKの土曜ドラマ「足尾から来た女(前編・後編)」で,南沢キャンパスの女子部講堂や初等部食堂がロケ地となったことを紹介し,学園との縁についても触れました.

2年生のほとんどが今回初めての足尾訪問であったこともあり,興味深そうに風景を眺めていました.また現地では残存する施設や,鉱山(坑道)の形態などの質問にも直接答えることができました.

環境文化創造センターでは今後もメンバー・他の専門性を活かしつつ,全学の環境に関わる教育・研究・経営・社会活動の支援を行っていきたいと考えています.

 

新型コロナ禍のなかの前期課程修了研究旅行

(2014年)1月25日(土)後編放映! NHK土曜ドラマ「足尾から来た女」のロケが学園で行われました

 

文・写真:吉川 慎平(環境文化創造センター・最高学部)

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