<最高学部1年生から出された計画書>
最高学部には、これまでも様々な形で学生の自主的な研究活動が行われた歴史がある。最近では2009年度~2014年度まで、男子部卒業生のお一人からの寄付を財源とする「学部生自主研究奨学金」を利用した自主研究が行われた。新年度を迎えて、最高学部に進学した1年生8名から高等科の探求の時間に取り組んできたことを発展させて「リジェネラティブ・オーガニック(RO)農法による和棉栽培」の自主研究の計画書が提出された。
<那須農場で種まきを行う>
研究の目的の1つには不耕起農法による和棉の栽培がある。早速5月14日(土)に最高学部学生6名に女子部生徒2名が加わって那須農場に入り、15日(日)に那須農場の畑を使って、和棉の種まきを行った。その時の様子はこちら。

<「RO農法による和棉栽培」の展望と期待>
①環境再生型(循環型)農業
不耕起農法は、化学肥料、農薬を大量に長年使うことで痛んだ農地を再生させる環境再生型(循環型)農業と考えられている。不耕起農法によって、土壌の透水性・保水性が高まり、土壌内の有機物が増え、養分が保持され、微生物の豊かな棲息空間が広がることが明らかになることを期待する。
②土壌の炭素貯留と温暖化の抑制
不耕起農法は、農業部門の温室効果ガス排出量を減らすことに貢献し、温暖化を抑制すると考えられている。植物の根とそれを取り巻く土壌中の微生物や小動物の共生により、土壌中の炭素貯留量が慣行農法の土壌より多くなることが明らかになることを期待する。
③衣類のライフサイクルの学びへの第一歩
アパレル産業には、綿花栽培時に使われる農薬による健康被害や劣悪な労働環境のもとで働く人たち、衣料品の大量廃棄など多くの問題が存在する。「和棉栽培」が、衣類の素材調達、生産製造、使用、廃棄までのライフサイクル全体について経験を通して学ぶ第一歩になることを期待する。
<高等科生徒の那須農場での活動再開>
東電福島第一原発事故による放射能拡散の影響を受けた那須農場では、その後場内の除染が進んだことから、最高学部は条件付きで那須農場および周辺での研究活動を行ってきている。活動範囲における放射線量は安全とされる国際基準に近づきつつあることなどから、2022 年 4 月からは最高学部の方式と同様に高等科(女子部・男子部)においても活動が認められることとなり、今回はじめて高等科生徒2名が活動に参加した。
今回、種まきに先立って畑における放射線空間線量を測定し、基準より低い値になっていることを確認した。
(「安心・安全のしおり」Ⅳ.放射能対策を参照。)

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那須農場でのリジェネラティブオーガニック農法への挑戦【和綿の種まきを終えて】(最高学部)
文:鈴木康平(環境文化創造センター次長・最高学部特任教授)
写真:最高学部1年