2022 夏 すいせん図書 【8】 /図書館 お知らせ・近況 - 一貫教育の【自由学園】/ 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上

2022 夏 すいせん図書 【8】 /図書館 お知らせ・近況 - 幼稚園・小学校・中学・高校・大学部・45歳以上【一貫教育の自由学園】

図書館 お知らせ・近況

2022 夏 すいせん図書 【8】 

2022年8月22日

朝夕の気温が先週までと変わってきましたね。今年は雨の日が多く、豪雨被害などが各地にありました。帰省している生徒・学生の皆さんの地方がご無事であることを祈ります。被害にあわれた地方では、一日も早く日常を取り戻すことができますように。
 
「2022 夏 すいせん図書【7】」 は こちら。

※先々週の「2022 夏 すいせん図書【6】」は、手違いで予定よりも短い原稿が掲載されてしまいましたので、元の長さで再掲載しました。お詫びいたします。
 「2022 夏 すいせん図書【6】」

【すいせん図書 2022.8.22】

最高学部社会系研究室 T 先生
『ジョン・ロールズ―社会正義の探究者』 齋藤純一・田中将人箸 中公新書
今年はロシアのウクライナ侵攻や参院選などがあり、国際関係や政治について改めて考えさせられることの多い年になりました。世界と日本社会の様相が目まぐるしく変化する中にあって、わたしたちは日々何を大切にしていきたいか/すべきなのかという問いの前に立ちとどまる瞬間があるかもしれません。わたしたちと同様に、時代の激しい変化の中で真の「正義」とは何かを生涯にわたり考え続けた哲学者がいました。アメリカの政治哲学者・ロールズ(John Rawls, 1921-2002)です。ロールズの主著『正義論』は原著が538ページ、邦訳本が813ページの大著ですが、中等科と高等科の皆さんにはまずはロールズの哲学の息吹を感じていただきたく、ロールズの研究者によるコンパクトな入門書である本書をおすすめしたいと思います。「いや、これは難しい!」と思われるかもしれませんが、大丈夫です。問題の難しさと奥深さを感じる経験の中にこそ「哲学すること」のきっかけがあるからです。世界そして日本社会の中でわたしたちが生きるための「哲学」の大切さを本書を通じて考える機会になれば幸いです。
本書ではロールズの哲学の全体像が見通せるように行き届いた研究の成果が随所に示されています。特定の哲学者に関する研究ではしばしば、その哲学者の主張の正しさを知らず知らず前提して議論を進めてしまいがちですが、本書はロールズに対してこれまで寄せられた批判も多く取り上げており、とてもバランスが良い構成になっています。
学部生にもぜひおすすめしたい一書です。

理科 N 先生
『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』 広田照幸 著 ちくまプリマー新書
学校は大切というけれど、なぜ退屈に思えることが多いのでしょうか?
教育社会学の視点から、学校の社会における役割や目的について、考える本です。
「道徳は教えられるか」 「学校の勉強は仕事に役立つか」 「教育は格差を解消できるか」 「AI社会で教育は変わるか」 「自分を探すとは」 著者は教育学・教育社会学の権威なのですが、中学生、高校生に語りかけるような読みやすい文章で深い内容を解き明かしています。そして最後に「私は若い世代の皆さんに期待をしたい。皆さんには、『平和で民主的な国家及び社会の形成者』(教育基本法)になってほしい。よりよい世界を作り出すためには、若い皆さんの力が必要なのです。」というメッセージが。自由学園の「それ自身一つの社会として生き成長し、そうして働きかけつつある学校」(教育三十年)がリエゾンしてきます。

『元素のふるさと図鑑』 西山 孝 著 化学同人
元素の周期表は横長で上の方がデコボコで見るからに変な形だし、日本語が母国語の人にとって、元素記号は記憶しにくいです。何で鉄が「て」じゃなくて「Fe」なんでしょう!!
一方、元素の半分以上を占める金属元素(メタル)は私たちの身の回りで大変活用され、私たちの生活・社会を支えています。金属はその鉱石の中から取り出されて利用されるのですが、その鉱脈、地球が「元素のふるさと」です。鉱石が素材になるまで、希少な金属がハイテク製品になるまで、そして金属資源の未来は、、そんなことを図や写真でわかりやすく解説されます。こういうことを勉強してみると、案外元素記号も覚えやすいのかな、と思います。最終的には単語カード方式で暗記もいいですが、元素の背景を知る、というのも一つの方法です。

国語科 K先生(2)
『めざめれば魔女』マーガレット・マーヒー箸 岩波少年文庫
14歳のころ、中途半端な自分に嫌気がさしていた。もう少し大きくなれば、解決されるであろう感情も、このまま生きていったら何も変わらないであろう予感も、ただ過ぎていく毎日にいつしか埋もれていった。
二十歳を過ぎてから、この14歳の少女が主人公の本を読んだ。唐突に当時を思い出した。
小学校のころは、本が好きだったのに、いつの間にか読む冊数が減っていった君におすすめしたい本。

『埋もれた世界』 A.T.ホワイト箸 岩波少年文庫
夏休みだ!エジプトに行って大発見してみたいものだ。
行けない、行かない人がほとんどだろう。この本を読んで、大発見を体験しよう。もしかしたら、君が考古学者になろうと決意する瞬間が訪れるかもしれないし、歴史が好きになるきっかけに出会えるかもしれない。発掘された文明の話を通して、君の興味も発掘しよう。


 
『アートで魅せる 旧約聖書物語』 フレデリック・ボワイエ著 千倉書房
旧約聖書はなかなか読み通せない。つながりも分からないし、展開が読めない・・・。そんな君にこの1冊を。
横書き、イラスト付きで読める旧約聖書だ。聖書をやさしく解説している本はたくさんあるけれど、これは解説書ではない。お話として聖書を読破してみたいならおすすめ。


【二十歳】
昔、東大に面白いゼミがあった。「調べて書く」というただそれだけの目的で、「二十歳のころ」をインタビューする。おもしろいものが集まったから本になった。それが『二十歳のころ』である。成人年齢が18歳になっても、成人式は二十歳の年だし、お酒もタバコも二十歳を過ぎてからである(守りなさい)。やっぱり、二十歳は大きな区切りなのだ。二十歳は思い悩む。でも、13歳だって、17歳だって思い悩む。では、先に二十歳をのぞいてみないかい?『二十歳のころ』は、実は絶版だけれど、『二十歳の君へ』ならまだ出回っていますよ。
思い悩む二十歳と言えば『二十歳の原点』である。私は、最高学部生のころ、やたらと大学闘争に関心があった。著者は大學闘争の時代に生き、この作品を残して逝った。表紙をめくったら、高野の写真が載っている。君も彼女の目に惹きこまれることだろう。

『ロング・グッドバイ』 レイモンド・チャンドラー箸 早川書房
ハードボイルドに生きてみたいかい?ただカッコつけるのとは、わけが違うぞ。分厚い一冊に、熱い男の友情も、逃避行も、ゴシップも、もどかしい想いも詰まっている。フィリップ・マーロウにはまったらシリーズでどうぞ。ただ、この1冊だけ読むのも十分たのしい。映画にもドラマにもなっているけれど、この原作が1番おもしろい。高等科生は英語でもどうぞ。

 

 

家庭科 N先生
『きものリメイクスタイルブック』佐藤 智子 著 羽山 みな子著 永岡書店
長い夏休み、新しい生地から好きなものを作るのも良いですが、古い着物をほどいて制約がある中で素敵な衣服を作るのはどうでしょう。今年からLA(リビングアカデミー)で講師をつとめてくださっているリメイクの先生のご著書です。着物ほどくところからの扱いを丁寧に書かれていますので、自由な発想と物を永く大切にするヒントになればと思います。

カテゴリー

月別アーカイブ