2019年3月25日(月)、大和リース株式会社より観測機器の寄贈が、飯能市の臨席のもと、名栗や海山の床材を使用している最高学部食堂で行われました。
観測機器は、簡易気象観測装置と土壌センサ、センサ搭載カメラで構成され、携帯電話回線を利用してデータをどこにいても取得できるもので、もともと農業環境のモニタリングを想定していたものですが、今回、名栗の自由学園の分収造林地などに設置して、森林環境のモニタリングに活用する予定です。
寄贈式では、はじめに大和リース株式会社の森田俊作代表取締役社長から目録の贈呈が高橋学園長に行われました。ご挨拶の中で「大和ハウス工業の創業者のモットーは、何をしたら儲かるかではなく、これからの人々が何を必要としているかを考えて事業を起こせ、というものです。国の根幹は教育です。寄贈する機器を長く使っていただいて、本当に豊かなこれからの国づくりに資するような成果をあげてください」というお言葉をいただきました。
続いて、感謝状の贈呈が高橋学園長から行われました。感謝の言葉の中で、昨年4月に、「すべての子どもたちに学校菜園を」と呼びかけ、その活動が世界に広まっているアリス・ウォータースさんをお迎えする会[1]が、自由学園明日館で開かれた折りに、森田社長と席を隣あったことがきっかけとなって話が進み今回に至ったことや、高橋学園長の在校当時の経験から「今回設置する名栗の植林地には百葉箱があり、その中に温度を記録するゼンマイ式のドラム観測機がありました。私が中学3年生の時は交替で週1回記録紙交換とゼンマイ巻きに行ったのですが、それが居ながらにして現地のモニタリングができるというのは隔世の感があります」というエピソードが紹介されました。
昨年末に、1950年より植林を行い,毎年,高等科の生徒が文字通り手塩にかけて育林活動を行ってきた分収造林地(市有地)の森林と木材は、飯能市の後押しもいただき、国際的な森林認証を取得しました[2]。その森林認証林としての森林整備や管理,木材の利用,森林環境教育などに関する各種事業を市と連携して実施することを目的として、今年の初めに飯能市と森林整備に関する連携協定を締結致しました[3].その中に,森林に関する継続的なモニタリングの実施,それを通じた研究活動の実施がうたわれています.
その関係で、飯能市の産業環境部森林づくり推進課淀川茂主任にもオブザーバーとしてご出席いただき、その実現に向けた今回の動きへの謝辞と、その観測データ活用による市内の森林整備への期待のお言葉を頂きました。
贈呈式後、学園のクッキーとお茶をいただきながら歓談の時間を持ち、「木の学び」木工担当の遠藤智史先生よりの中等科1年次に生徒が自作する机椅子の説明がありました。そののち、観測データのモニター画面の設置を検討している、名栗や海山の木を使用し2018年度グッドデザイン賞を受賞した「自由学園みらいかん」[4]へ移動しました。館内をご覧いただき、最後はみらい館前で今後の発展を祈念して記念撮影を行いました。
グループの大和ハウス工業の創業者である石橋信夫氏(1921 – 2003年)は、奈良県立吉野林業学校を卒業されて満州営林庁や吉野の木材会社に勤務された木の専門家でした。戦後の木材不足で、鋼管パイプを使った住宅を考案します。鮎釣りをしていたおりに、日暮れが迫っているのに遊ぶ子供たちに早く帰宅するように声を掛けると、早く帰っても自分たちのいる部屋がないと答えた。石橋氏は子どもたちの勉強部屋を作ろうと決意し、庭先に設置できる我が国初のプレハブ住宅となる「ミゼットハウス」を開発したという教育につながる逸話を思い出しました。
川上の森林をルーツに始まった大和ハウス工業は鉄骨系にシフトしましたが、今回再び川上の森林に目を向けてくださったことは、大和ハウス、自由学園双方ともに、森と教育、木の学びというという遺伝子が生き続けているのではと思った次第です。
環境文化創造センター長 杉原 弘恭
※本サイト内ブログ記事より参照のこと
[1] 「4月18日(水) アリス・ウォータースさんを自由学園明日館にお迎えする」
[2] 「名栗植林地とその材が森林認証を取得」
[3]「飯能市と学校法人自由学園が 連携による森林整備協定を締結」
[4] 「自由学園みらいかん」が 2018年度グッドデザイン賞を受賞